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書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。

田口卯吉による東海散士『佳人之奇遇』評ー令和二年五月三日(日)

田口卯吉による東海散士佳人之奇遇』評ー令和二年五月三日(日)

 

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田口卯吉の肖像(「近代日本人の肖像」より)

田口卯吉は、明治の経世家で、幕府の儒者佐藤一斎の孫の子にあたる。卯吉の祖父慎左衛門は、佐藤一斎の長男なのだが、胆力のある豪の者だったので、儒者には向かないということで、田口家に入った(『明治文学全集14 田口鼎軒集』昭和五十二年、筑摩書房、456頁など参照)。それはそれで凄いのだと思うが。

 

田口卯吉は、日本史では『日本開化小史』の著者として知られていると思うが、エコノミストとしては自由貿易論論者だった。

 

その卯吉が明治十九年に「東京経済雑誌」に発表した「新著佳人之奇遇を讀む」を紹介する。「佳人之奇遇」が「新著」であった時代に何だか驚くが、短い文章をもっと短くする。

 

この本は天下の不平を集めたものである。スペインやアイルランドの「佳人」(美人のことなのだと思う。『新字源』には「美人」の他にも「忠義の臣」ともある)とであり、「戊辰の變」に嘆き、東洋の苦しい立場を嘆き、保護政策を唱える人物である。

全巻嘆きまくり怒りまくりの本で、そのまま書いてあるから、卯吉はびっくりする、というようなことが書いてある。

 

ただそれだけ紹介したかったのだが、佐藤一斎の長男の孫が田口卯吉であり、ムスリム同胞団などのイスラーム復興主義を調べて柴四朗(東海散士)に辿り着く。読書はおもしろいね。現代はちゃんと過去につながっているよね。戊辰戦争から9・11テロまで関係を見ることはできる。

 

現代でもTPPの問題にしても自由貿易保護貿易ということが話題になる。また記事にする予定だが、柴四朗は自由貿易による経済侵略を警戒したんだよね。

 

こういう対立はすでに明治時代に存在するのである。骨太な経世家の論説の方が面白いよね。

 

惜しいのは、このあたりの知識は現代日本人の教養から、ほとんど抜け落ちていることである。文庫本で手軽に手に入る訳でもない。

 

自分で出版社を設立して「柴四朗選集」や「柴四朗著作集」を出版してみたい。

 

必ず若い人たちにも届くと思うから。この断絶を何とかしたい。現代の駄本よりも、明治の良本が手に入る環境を作りたい。

 

以上。