Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。

日経整理ー平成31年1月19日(土)晴れ

日経整理ー平成31年1月19日(土)晴れ

 

本当は、先週やろうと思っていたのだが、しんどくて出来なかった。

だから、先週の分も含めてこの週末に日経を整理しよう。

(*なお記事を書いた後は、原則切り抜きを捨てます。部屋の整理のため。持物を多く持たない暮らしにしたいからです。)

 

1月9日(水)夕刊?

「こころの玉手箱」 みずほFG会長 佐藤康博氏 第三回目

入行して8年目にニューヨークに転勤となった話。一度海外で働いてみたい私にとって興味のある記事だ。

氏は「アセットファイナンス」の部署に配属されたとのことだが、英語は全くダメなまま赴任したらしい。直属の上司が英語の得意な国際派で、すべて英語で打ち合わせを取り仕切っていたという。

ところが、その上司が引き抜きで米系の金融機関に行き、重要案件が佐藤氏の責任になったという。急遽、弁護士や会計士などの関係者と英語で打ち合わせをしないといけないことになったという。その時のことを振り返り氏は「高速道路を疾走するかのようだった会議は、トラクターの走る農道に転じた」という。

ああ、みずほFGの会長でも仕事で苦しんだことがあるんだなと思うと、今の私も気持ちが楽になる。

結局、3か月後にはなぜか、英語が聴き取れるようになり、言いたいことも通じるようになったということだ。

 

朝刊 5面 くらしナビ欄

「ライフサポート」つらい腰痛 若い世代も

会社生活に役立つ記事。

トイレに立ったり、体操したりせよとのこと。

 

1月10日(木)18面マーケット商品欄

「ぷりずむ」

バブル崩壊後、非正規社員の代表的な職種であった事務職の正社員の求人が増えているという。1つには、派遣社員の不足、もう1つには、3年が上限の派遣を雇うぐらいならはじめから直接雇用にしようというのが主な理由らしい。

私がハローワークに行っていた頃は、「事務の就職は難しい」と言っていた。いまも中途採用求人倍率は0.5倍以下ということだが、まあ求人は増えているとのこと。

 

24面 PERSOLという人材会社の働き方についての全面広告

米倉誠一郎氏の講演

松下幸之助も「経営の神様」ではないことを最近発見した」。多くの失敗を乗り越えた人だからだという。

こういう発言は、「何をいまさら」と言われそうでなかなか言えないものだが、正直に言っている点には好感をもった。

 

アクセンチュア代表取締役社長 江川氏

人材会社のパーソルの担当者から、長時間労働が恒常化しているアクセンチュアには「評判が悪すぎて、優秀な人を紹介できない」と言われたそうだ。その、後改革したとのことだが、思わず笑ってしまった。「優秀な人」が多くいそうなアクセンチュアがそんなことを言われていたことに、爆笑です。

 

1月18日(金)夕刊13面 社会欄

安田講堂事件50年 活動家らのいま」

東大安田講堂事件から50年とのこと。生まれていなかったが、もうそんなに経ったのか。記事に登場する元活動家らはもう70代。当時、東大の助手であった最首悟氏に至っては80代で、今日の朝のTVに出ていた。バックの本棚は思想っぽい本が並んでいた(氏と撮影場所は関係なかったのかも知れないが・・・)。

竹内洋氏(社会学者)の「理屈より暴力行動」「反知性主義を呼び込んだ」というコメントは、幻想を持たない点でひとまず好感が持てたのだが、、「運動に敗れ、人生を棒に振ったインテリ層が社会の様々な職業に分散することで、文化の底上げに一役買った側面もある」という点は、他人事とは思えない悲しみを覚えた。もちろん私は全く活動家ではなかったのだが、「人生を棒に振った」という点は共通していると感じた。就職も難しかっただろう。

 

記事の見出しでは「社会への声 上げ続ける」となっており、それはそれで自由にしたらいいのだが、社会活動だけでなく、宗教的な安心立命の境地や死生観など、70代となった今だからこそ分かる人生全体の境地をもっと掘り下げた記事を読みたかった。問題はそれがあるのかどうかだ。

 

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』★★★★☆

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』(大和出版、2016年)★★★★☆

 

連日残業の続く「デスマーチ」状態の日々。全体を考えず細部ばかりつつく仕事のやり方で困らせて来る先輩社員。長くいてるだけの社員のいびりのような指摘。非正規で職歴の浅い者には常に直面させられる問題である。

 

「自分はこんなことをするために生まれてきたんじゃない」と思いつつも、「じゃあ、何のために生まれてきたのか?」、「目の前の仕事に取り組むことこそが成功への道はないのか?」「ここをやめて生きていけるのか?」「まだ十分に仕事ができないから責任転嫁しているだけではないのか?」」「社会とはそんなところだ!」と自分を納得させつつ生きている。

 

そんな仕事上の心の悩みに役立つのが、この本だ。タイトルから想像されるのとは異なり、単なる20代に上昇志向を説いた本ではなく、むしろ職業人生の戦略本ともいうべきものだろう。

 

「「スジの悪い仕事」に時間をとられるな」の項目では、「スジの悪い仕事」の判断基準として、「成長につながるか」「評価につながるか」のという2つの着眼点を読者に提示する(60頁以下)。

 

「どこへ行っても通用するスキルとは何か?」の項目では、スキルを三種類に分けて、読者の判断を助ける。読者は日々の業務にこれを適用し、打ち込むべきか判断すればよい。

・第一種のスキル:その会社の中で通用するスキル

・第二種のスキル:その業界の中で通用するスキル

・第三種のスキル:業界を問わず、世界のどこでも通用するスキル

「仕事を弁別する際には、この第三種のスキルを獲得できるタスクなのかどうかということが、大変重要なポイント」(74頁)

 

第一種のスキルは、いずれ「不良資産化」する。なぜなら、会社の寿命は短くなってきているからだ。自分の定年まで会社があるとは限らない状況であることを真剣に考えるべきだという。

 

他にも「「上司は偉い」という信条を手放してみる」(89頁)、「“マジメな不良”のススメ」(111頁)など、つい生真面目になりがちな自分にとって参考になる項目が多い。

 

最後に、現在の私にとって共感できる文章を挙げておこう。

 

「実際には業務プロセスや役割分担、あるいは商品やサービスそのものに問題があるはずなのに、成果が出ない責任がすべて若い個人に負わされるわけです」(123頁)

 

私は若くはないが、この年の新人にも共通する悩みである。

 

「20代半ばの頃のことですが、一人ではとてもさばけないほどの業務量を任され、連日連夜深夜残業でも仕事は終わらず、ミスが頻発していてために、精神的に極めて不安定になった時期がありました」(同頁)

 

企業側の人件費不足の責任転嫁をしていることもないだろうか。

 

「いまから考えれば、お粗末な業務フローとバランスを欠いたチーム体制・役割分担がその原因だったのですが、ウブだった当時の私は、これほどまでに仕事が遅く、ミスを連発する自分はビジネスパーソンとして不適応者なのではないかと悩み、いっそパン屋にでも職替えをするべきか?と悩んでいたのです」(同頁)

 

私はパン屋になっても、売り上げを達成できず、いびられそうだが・・(生計を立てていけているパン屋さん、尊敬致します)。いつか冷静に分析し、改善できるコンサルのようなことをができるようになるのだろうか。

 

このページだけでも今の私には購入に値すると本だと思って、今月ビジネス書を買う予定はなかったのだが、財布のひもをゆるめた。

 

購入したばかりで、まだすべて読んでいないが、今の状況から逃げられなくても、自分の現在地を知り、仕事人生に一筋すじでも光を見出すためにおススメできる一冊である。

 

 

still alive-平成30年1月14日(月)

海の向こう by Yohei

 

俺はまだ大丈夫 これが分かる感性が残ってた

これに共鳴できる自分が好き

 

俺の中に残ってた あいつを誇れる感性が

これがあればもう十分 人の目を気にせずに生きていける

自分の内面に集中していける

 

あの時から止まっていたと思ってた 俺の中のあの気持ち

でもちゃんとまだ残ってた あいつを誇れる感性が

 

自分の中に残ってた あいつの作る音楽が

知った時には死んでいた 海の向こうの空の下

 

失いたくないこの気持ち 失いたくない心の砦

あいつが分かる自分が好き

 

 

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月が見える

 

 

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そんな空

 

OSAKA OSAKA ー 平成31年1月12日(土)

久しぶりに大阪に行ってきた。

 

正月気分が抜けきらないのに残業、残業の毎日だから、自分の人生に疑問を持つ毎日。だから今日は、久しぶりに買い物に行こう。行ったらいい。行ってしまおう。

 

とはいえ、無駄遣いは出来ないから、行く前に綿密に使える金額を計算。

朝30分ぐらいかけて、今月の予算を紙に書き出しました。それをスマホで撮影して、決して予算オーバーにならないように管理。

 

まずはジーンズを買いに某ショップへ。落ち着いたいい雰囲気の所。

Levis's501を購入。十代の頃に履いていたけど、二十代になってからお金がないのもあって、服装に無頓着になってしまっていた。でも、やっぱりリーバイスジーンズが好き。だから三十代で買った。近所のショッピングモールで買った前のジーンズは、約10年履いたから、今回も10年ぐらいは大事にしたい。

 

そしてタワーレコードへ。

ライブ・スペースで声がしたので、見て見るとアイドル系のイベントがやっていました。「やんちゃん学園」とグラビアアイドルの「シャーベット」というグループでした。ファンが「オタ芸」ぽい掛け声と動きをしてました。

ヤンチャン学園音楽部【公式】 (@yc_gakuenmember) | Twitter

sherbet(シャーベット) (@sherbet_info) | Twitter

 

公式ツイッターにその時の写真が載っていた。「日本一黒いグラビアアイドル」の橋本梨菜さんはTVで見たことがあったけど、実物の方が品があって、よかったな。

橋本 梨菜(@rinasketch)さん | Twitter

 

往復3回ぐらいタワレコに行ったが、最後は宮下遊さん(男性)という方がファンとの握手会をやっていた。ニューアルバムを出したとのこと。ファンはほとんど女性。

https://twitter.com/miy_yuu

 

他にはアニメとコラボした喫茶店が満員で並んでいた。あまりよく知らない世界だったけど、客が多かった。

 

今日は本当に多くのイベントを見たな。さっきは道端でコーラスみたいな企画をやっていたし。自分の趣味とは違うが、まあ楽しかったな。

 

<本日購入した本>

山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』(大和出版、2016年)

*20代に限らず、上司と言うか、先輩社員に悩んでいる人に読んで欲しい本。「スジの悪い仕事」に時間をとられるな、など今の私に必要なメッセージが入っていて有益なので、購入を決意した。

 

池田・藤倉・井上著『チーム開発 実践入門』(技術評論社、2014年)

 *私はソフトウェア開発やシステム開発をしている訳ではないが、仕事の進め方や共同作業のあり方の共通点があると見抜き、購入。プロジェクトをうまくまわすために、それこそメール管理やらファイル管理やらヴァージョン管理などの内容が書かれてあるので、迷わず購入。

 

D.Boswell, T.Foucher『リーダブルコード』(オライリー・ジャパン、2012年)

*ITエンジニアらのインタビューでこの本を進めている人が複数人いることで知った本。プログラミングをしている訳ではないが、仕事でコメントが分かりにくいことが私にも相手にもあるので、何かのヒントになればいいと思い購入。このタイミングで読んでおくことにしよう。

 

デイビッド・セイン『なやまず書ける 英文メール&SNSレーニング』(河出書房新社、2018年)

*英文メールが必要な仕事。英語本の出版でお金を稼いでいると思しき著者にお金を貢ぐようでいやだが、仕事でパニックにならない利益の方が大きいので仕方がなく購入。

 

STRUNK AND WHITE, The ELEMENTS of STYLE (PEARSON, 1979)

*英文の細かなスタイルの確認に必要なので購入。いつか必要だと思っていたが、買わなかった一冊をこのタイミングで。

 

なんだかんだでほとんど仕事の本じゃないか!せっかく仕事から離れるために、出かけていったのに!ほとんど唯一の楽しみのジムワークのために1冊。

 

MUSCLE &FITNESS 日本版(2019.2)

*トレーニングの仕方やエビデンスに基づいた栄養・食事記事が載っている。外国の記事なので誰が翻訳しているのだろうと見たら、巻末に1名の女性の名前が載っている。えっ!?この人だけでやってるの?まあ、やっているんだろうなー。

 

『東大医学部在学中に司法試験に合格した僕のやっている シンプルな勉強法』(KADOKAWA、2018年)

*おっと忘れてた。20代になってからは(我ながら遅い)和田秀樹氏などの受験対策本で、勉強の方法を自覚的に勉強してきた私。医学部は教科書の記憶量が多いと友人から聞いたが、著者は司法試験にまで合格するのだから、勉強としてはすごい。別に学校の勉強だけを人間評価の基準にしていない私だが、彼が法学部ならともかく、医学部にいながらというのは、やはりすごい。医学の勉強でかなりの時間を削られる、どっちつかずになる危険性があるのに。ちなみに私は法学部在学中、4回受けて4回とも択一試験で落ちた記録の保持者です。行政書士はなんとか取ったけど、稼ぎにつながっていないダメ男です。人生の最後にはそんなことどっちでもいいことだが、人生の途中では残念ながら関係がある。

 なんとか今高校数学の復習を計画中だ。前にブログに書いてからちっとも復習できていない。今年はなんとか数学Ⅱぐらいは復習したい。でも、途中でまたやめるだろうなー。そんな時のために買っておいた。

 

食事は阪急三番街にあるきれいで大きなフードコートで頂く。

PESCAというイタリアン系の店。「ベーコンと半熟玉子パイッツァ」を注文。普段、なかなかピザを食べる機会がないから、この日だけは自分に許そうと思った。

 

「パイッツァ」って何?と思いつつも、「ピザ」をかっこよく言ったものだろうと思っていたら、パイ生地に具がのっているピザみたいなもので、クリスピータイプよりもっとやわらかくサクサク感のある食べ物であった。

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パイッツァ?

おいしそうでしょ。

 

結局タワレコではMigosの前作Cultureを輸入版で購入し、帰宅。

Fitbit(スマートウォッチ)を見ると、27000歩を超えて3300kcalほど消化していたようだ。OK!  

 

 

源泉ー中江兆民をめぐってー平泉澄『日本の悲劇と理想』(昭和五十二年、原書房)

源泉ー中江兆民をめぐってー平泉澄『日本の悲劇と理想』(昭和五十二年、原書房

問題提起

前回、明治思想史における左翼と右翼の源流について述べた箇所で登場した中江兆民について、持ち越している問題がある。それは中江兆民をどう捉えるのかという問題である。

 

今日の学校事情には詳しくないが、まず多くの人が学校の歴史教育の中で、中江兆民を知ったのではないだろうか。自由民権運動の闘士であり、ルソーの「社会契約論」(「民約訳解」)の翻訳者であり、現代の進歩派の先駆者であるというイメージである。

 

私などは、中学生の時に、歴史の教師が「日露戦争」の時間に幸徳秋水が、ロシアの人々と連絡し合い、平和を実現する努力をしていたことを中心に習ったものである。

 

東郷平八郎も秋山兄弟も乃木希典の話も記憶に残っておらず、幸徳秋水が平和への努力をしていたということだけが記憶にのこる授業であった(もしかしたら、軍人の話もしていたかも知れないが、幸徳についての記憶しかない)。結局、乃木大将のことなどを知りたかったら、自分で勉強するより他に方法はなかったのである。

 

結局、日露戦争を多面的に見ず、幸徳秋水のエピソードを(私の記憶では)大写しにしていた教師。その憧れが幸徳秋水。その師匠が中江兆民で、「東洋のルソー」なのだという印象を持っていたし、いまもそういう印象の人が多いのではないだろうか。

 

その印象を変えたのが、前回簡単ながら要約した葦津珍彦氏の史論であった。

葦津氏の論文から、兆民についての文章をいくつか引用する。

(葦津氏の引用はすべて、葦津珍彦選集編纂委員会・編『葦津珍彦選集(第二巻)』(神社新報社、平成八年)からのものである。)

 

「兆民が晩年に対露主戦論者であった事実は一般によく知られてゐる。だがこの事実をもって、急進的民権論者としての兆民が、晩年になって民権思想の線から逸脱したかのやうにいふのは当たらない。それは日本の自由民権思想についての無理解を示すものである。日本の自由目民権思想史は、維新にさいしての尊攘運動、征韓論、民撰議院の建白を通じて、つねに強烈な国権意識と結びついてゐる」(葦津・上掲書、148頁)

 

「近代思想のうへで、兆民中江篤介の名は、急進的民権論者の先駆者として、あまりにも有名である。世間では、かれをフランス流の政治思想家として解する人が多い、イギリス流の温和な立憲主義に比して、はるかに革命的な民主主義を説いた人とされてゐる。このやうな評価も根拠のないことではないが、兆民の思想と人物はかやうな単純な評価のみでは理解しがたいやうに思はれる」(葦津・上掲書、872頁)

 

日本の思想や歴史を学びたいものが、葦津珍彦氏や平泉澄氏の著作を手に取ることがあるだろう。どちらも神社に関係のある家の出身だ。神・儒・仏の日本思想の一角を占める神道である。その神道系の思想家といってもいい葦津氏の中江兆民像と平泉澄氏の中江兆民像が異なるのである。これをどう考えれば良いのだろうか。 ここでも汲み取るべき源泉はどこにあるのかという問題にぶつかるのである。

 

平泉澄『日本の悲劇と理想』(昭和五十二年、原書房

本書は、平泉澄氏の日米開戦をめぐる歴史的考察と回想をまとめたものである。

私の観点から見て興味深いのは、中江兆民の位置づけについてである。

 

本書は日本の思想に限って見ると、 西園寺公望自由主義近衛文麿国家主義との対決を軸としている。平泉氏は西園寺の自由主義を批判し、近衛文麿の論文「英米本位の平和主義を排す」や「国家主義の再現」に見られるような国家主義を評価している。

 

平泉氏が評価する「明治維新の精神」とは、「忠君愛国、勤倹尚武、道義を以て内外の問題を解決して、国体の基礎を確立し、国威を輝かす」ことを意味する(170頁)。

 

近衛文麿について

平泉氏は「英米本位の平和主義を排す」、「国家主義の再現」の二本の論文で発表された近衛文麿の立場を高く評価する。

「近衛公は、その修学時代の環境からいへば、個人主義自由主義、もしくは社会主義に進まれても不思議ではなく、マルクス主義さへも、全然無縁では無かつたのでありませう」(147頁)。

「かやうな環境の中に其の学生時代を送られた公が、一たび大学を出て内務省へ入るや、大正七年には、「英米本位の平和主義を排す」といふ大論文を発表し、そしてそれより十六年後の昭和九年には、「国家主義の再現」を論述して軍部に深い理解を示されたのは、殆んど奇蹟のやうにさへ思はれる所であります」(147頁)。

 

(西園寺の政界での活躍を述べた後、近衛を指して)「然るにここに一人の人物あつて、少しも興津を恐れず、興津の思想が、実は明治維新の指導精神に反対するものであり、我国の将来を暗くするものである事を看破し、堂々と之を批判しました」(170頁)。

興津:ここでは西園寺公望のこと。  

 

中江兆民について

明治維新を導き、之を断行した精神が、維新の直後に、外来異種の思想によつて乱された事は、中江兆民植木枝盛の書いたものを見ても明瞭であります。それはフランス革命に影響をまともに受けて、無反省に、直訳的に、我が国にもあてはめようとしたものであります」(151頁)

 

葦津氏の論文を経由した目からすれば、「無反省に、直訳的に」という点には疑問が残るが、まあ中江兆民植木枝盛のような明治以降有名になった思想家・活動家だからまだいい。平泉氏は板垣退助もその一人だと指弾している。これを読んだとき驚いた。

 

 板垣退助

「万国共議政府」や「宇内無上憲法」を主張した文章を板垣が立案し、植木枝盛に記述させたことについて。

板垣退助までが之に加はり、本書の場合、その立案者として姓名を表記する事を承認してゐるのは、事、重大なりと云はねばなりませぬ」(152頁)。

「板垣は土佐藩士であり、中岡慎太郎や谷守部等と共に勤皇の志をみがき、明治元年漢軍東征して江戸に向かふや、西郷隆盛は大総督府の参謀となり、板垣退助東山道先鋒鎮撫使の参謀となりました。(中略)。その勤皇の志士、維新の功臣が、いつのまにか個人の自由を目標として無上政法、世界国家を夢み、その暁には国家の解廃も可能であると説いたのであります」(153頁)

  

「板垣死すとも、自由は死なず」(でも本当はどんな意味?文脈で発せられた言葉?正確に調べていない)の板垣氏だし、幕末に有名になった人だからまだよい。さらに驚くのは西園寺公望である。

 

西園寺公望

平泉氏は西園寺公望(「興津の老公」)をその自由主義ゆえに批判する。東洋自由新聞社時代の社説についても、社主としての責任を問う。

「東洋自由新聞社は、暴力革命の企図を内に内蔵する所の、自由思想宣伝の機関であつたのであります」(159頁)

 「明治三年フランスに留学し、滞在十年にして帰朝するや、フランス革命思想の使途を以て自ら任ずるかの如く、東洋自由新聞社を立ててその社長となり、自由思想を宣伝鼓吹し、あげくの果ては、政府にして若し人民の自由を妨げるならば、大喝一声、手に唾して起ち、蹴破して過ぐるあらんのみと、脅迫するに至つてゐるのであります」(160頁)。

 「西園寺公望が幼少にして蒙りたる朝廷の恩寵は比類少なく、弱冠にして事くことを許されたる栄誉の座は、その高き事、抜羣でありました。しかるに外遊十年にして帰朝したる時、顔は依然として日本の貴族であつたでせうが、心はいつしかフランス革命の洗礼を受けて、全然別趣異様の感覚を抱き、自由思想の宣伝鼓吹に熱中するに至りました」(161頁)。

抜羣:ばつぐん

考察

「元老」といえば頑迷固陋とのイメージが付きやすいかも知れない。だが、西園寺公望は、今風に言うと「リベラル」なのである。現在、西園寺の事を池上彰氏風に解説して、考えを発表させれば、歓迎する人の方が多いと推測する。むしろ平泉氏の国家主義に批判が集まるかも知れない。いや、1990年代以後の保守論壇やその影響を受けている人からは、擁護の声が上がるかも知れない。とはいえ、問題はその擁護の仕方である。

 

 呉智英氏に倣って言うと、結局、自由・平等・友愛・人権を考察の基礎に置けば、西園寺の方が勝つのである。無理に批判しようと思っても、批判の声が上滑りするだけなのである。自由・平等・友愛・人権に代わる価値が順序立てて述べられ、それに伴う良き生活実感までないと国民からの支持が得られることは、私の生きている時間にはないだろう。佐伯啓思氏ぐらいに論じなければいけないが、そこに到達することは難しく、到達したとしてもTVで池上彰氏らの解説が、最高の知識だと思っているような人を説得できる可能性は低いのである。

 

結局、思想レベルで言えば、フランス革命の余波がまだ未解決のまま残されているという他ない。我々はフランス革命が用意した時代を生きているのである。

 

西園寺公望については、①公卿のなかでも別格の「清華」(せいが)の出身なのに国家を擁護する思想ではないではないか、②自由主義者ではないかという批判が平泉氏によってなされたと考えられる。

それに対しては、①出身にかかわらず自己の思想を形成するのは当然の権利である、②自由主義の線で進化していくことこそが日本国のために良いならばどうするのか、などの反論が予想されるであろう。私の中にも、混在していて結論が出ないし、簡単に結論が出る人が偉いとも思わない。

 

残された課題

中江兆民の全集を読みこむ。

・平泉氏の評論を論点別にまとめる。特に、西南戦争をどう考えるのかが参考になると思う。『大西郷』は鹿児島旅行前に購入していたが、精読できていない。

フランス革命について、講義できるぐらい調べる。

⇒我が国における影響を精査すること。

・A・フランスの『神々は渇く』を読みとおすこと。

⇒フランスの本は文学だが、語学としては歴史書が読めるぐらいフランス語を勉強したいという気持ちがまた出てきた。お金と時間を作ること。

社会主義共産主義に共感した華族の問題。

西園寺公望について、まとめる。

・近衛の二つの論文を精読すること。

 など。

このような課題をこなして、自己の中江兆民像を構築したい。

人生のタイムリミットを意識して。

いまの仕事は必要なこと。でも一生するようなことではない。

一度きりの人生を、自分が価値があると思えることに捧げたい。

でも、捧げられない現実を生きている。

生計を立てて行かないといけない現実を生きている。

この現実。

人生に終わりがあることを自覚して。自分の人生を意義のあるものにしたい。

今年はこの仕事をする。でもいつまでもこんな仕事はしない。

自分にプラスになることをしたい。これはわがままとはちがう。

自分のかけがえのない、一度きりの人生を、一番思索してきたことに費やしたい。

かげがえのない人に与えられたこの命を。 

 

 

日本の悲劇と理想 (1977年)

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日本の悲劇と理想

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