Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

日経整理ー仮想通貨系がおもしろかった1週間 平成31年2月2日(土)晴れ

日経整理ー仮想通貨系がおもしろかった1週間 平成31年2月2日(土)晴れ

 

今日も朝からジムに行き、その後しっかり食事。ちょっとネットでタブ譜を見てギターを弾いて、布団を干してから、日経整理の記事をまとめる。

 

私が10代の頃、耳コピする以外は、タブ譜(ギターならギター用に簡略化した楽譜)を本として手に入れるか、バンド雑誌(『バンドやろうぜ!』など)に載っているものしかなかったが、今は曲も含めてネットにあるのだから、ありがたいぜ!

 

それは置いておいて、全然ジャンルのちがう話だが、日経新聞の今週の見どころは、「仮想通貨」関係の記事だろう。

 

r.nikkei.com

(全文読むには会員登録が必要なようだ。)

 

平成31年1月29日(火)9面 金融経済欄

「仮想通貨 うたげの後」

「しくじり芸人の告白」と題して、コインチェックの「NEM」流出事件で、個人資産全額が危機にさらされた藤崎マーケットの藤原時氏(34歳)の今が記事になっていた。

記事によると仮想通貨の投資家が多いのは、30代なのだそうだ。仕事もしているし、家族もいる人もそれなりにいるし、金銭的な不安が多い世代だからだろう。分かるなー。

仮想通貨流失当時、藤原氏の手元には、わずかな現金と、6千円分の電子マネーが残っただけだったという。それでどうやって生活していけたのか謎である。そこも突っ込んで欲しかった。読者の疑問や謎の解答を記事にしてほしい。

 

とはいえ、コインチェックは流出額約580億円相当の内、7~8割にあたる466億円を日本円で返金したという。だから、藤原氏にもお金が返ってきたのである。

当初、私のまわりでもコインチェックは返金できないだろうと見る者がいたが、実際には返金している。記事によると、これは営業利益が2018年3月期決算で537億円あったから可能であったという。ふーん、なるほど。

でも、それで会社はどうなったのだろうと思う。流出当時、藤原氏コインチェックの和田社長自らが会見しているのを見て、流出を単なるネットのデマではなく、事実だと感じたという。

では、その和田社長とはどのような人物か。ここからが社会経済的におもしろいのである。それが次の記事である。

 

1月30日(水)9面金融経済欄

「人を集める仮想通貨」「参事の後も技術をつなぐ」

 

コインチェックは現在も存続し、ネット証券大手マネックスグループの子会社になっているようだ。

コインチェックの元社長は、和田晃一氏という数学が得意なエンジニアで、28歳ということだ。

受験勉強をきっかけとして、数学の才能に気が付き、数学一科目のAO入試を受け、大学の数学科に進学したという。その大学時代に先輩に誘われスマホアプリのプログラミングのアルバイトをしたことがきっかけとなり、アプリ開発などに関わるようになったというから、いかにも現代風の話である。

就職活動ではサイバーエージェントから内定をもらったが、大学を休学し、先輩とコインチェックの前身となる会社レジュプレスを起こしたという。

和田氏は個人間でネット送金をするツールとしてのビットコインに魅了されて、その方面に事業を伸ばしていったという。

プログラミングの腕前も信頼されているらしく、サービス内容がどんどん修正されいったという。

事件後もそんな和田氏を慕って「テクノロジードリブン(技術主導型)」のコインチェックに入社してくる人も多いという。

もっとも記事によると、金融庁の自主規制団体認定をめぐっての2大陣営の対立の一方のシンボルとして祭り上げられているのではないのかといい指摘もあるという。

現在前社長の和田氏は、コインチェックの開発担当の執行役員として働いているという。

 

1月31日(木)9面金融経済欄

コインチェックは死なず」「再びともった企業家魂」

和田氏を「仮想通貨の中核技術ブロックチェーンの信奉者」と位置づけて、仮想通貨を使ったICO技術に興味あるという前社長和田氏のコインチェック社を買収したマネックスグループ社長松本大氏の狙いを読み解いた記事。

仮に和田氏の構想通り世の中が動いて行けば、既存の証券市場は否定されるという。なぜなら、証券市場でしかできなかったタイプの資金調達が、ブロックチェーンを使った技術で可能になってしまうからである。

その点こそが大手ネット証券グループ社長の松本氏が目をつける理由なのである。株式市場の意義が低下した後にブロックチェーンを使ったICOの構想を「第2の創業」と位置づけているようである。

 

このような構想をどう評価するのだろうか。そもそも仮想通貨ICOというのは、「企業が発行した仮想通貨を投資家に売却して資金を調達する手段」のことで、過去の日経記事ではそのほとんどが詐欺がらみであるとの指摘を加えていた。

 

book-zazen.hatenablog.com

 

本記事でも米コンサルティング会社サティス・グループの調査に基づいて、「ICOの8割強が「詐欺」を含む不正がらみ」であると指摘することも忘れない。

 

記事は「ブロックチェーンを使えば多数の人から多額のお金を瞬時に集められるうえ、証券会社に頼まなくても資金を調達できる。一方、詐欺や犯罪の温床になる現状でICOは証券市場で存在感を示せない」と結ぶ。

 

本記事を読んで思うのは、いろんなトラブルがあったにせよ毎日の仕事を数学という自分の適性の上に立って仕事していける和田氏がうらやましいという一語に尽きる。適性の上に立てなかった男の末路は悲しいのである。

 

同じ日の1月31日4面政治欄「2019年私の注文」には「海外勢は構造改革に注目」と題して、ゴールドマン・サックス証券副会長のキャッシー松井氏が、「海外投資家」の観点から、東京オリンピックを控え外国人、女性、LGBTなどの活躍を推進する社会へ構造改革できるかどうかに注目しているという。「注目」といえば聞こえがいいし、記事にはいくつかの論点が含まれているのだが、要するに「海外投資家」の立場という「外圧」を通じて彼女が日本社会の「遅れ」とみなした部分、女性の地位、特に企業で働くタイプの女性の地位の向上を説くことが主眼の記事にしか思えなかった。私は「外圧」よりも「内発」的な発展を重視する人間だから、「異なる背景」「クリエーティブ」「ダイバーシティ」という言葉を連呼する人物に感動することはないし(言葉にあらわさずに、自分の可能性を引き出している人物は好きであるが)、そのようにして獲得された地位や社会状況は、海外製の建前が合言葉とされ、それに同調しない人間を「遅れた」人物とみなし、心理的な抵抗を蔽い隠さざるを得ない社会になるという点で警戒が必要であると感じる。

 

いまA・フランスの『神々は渇く』を半分ぐらいまで読む進めてきた。こんなことを書いていると私も「反革命的」な人物として、「遅れた人間」としてギロチンにかけられるだろうか。寝ている間にして欲しい。

 

 

 

 

Amazonプライムで映画『God Father』シリーズをー平成31年1月27日(日)晴れ

 Amazonプライムで映画『God Father』シリーズをー平成31年1月27日(日)晴れ

映画『God Father』を無性に見たくなった。

映画を見ていると現実逃避できるからということが見たい理由だが、もう一つには今少しずつアナトール・フランスの『神々は渇く』という小説を読んでいるからだ。

 

この小説も例によって呉智英氏の著作で言及されていることで知ったと記憶しているが、高校の時に岩波文庫版で買ったのはいいが、それから20年近く読んでいなかった。正確に言うと、読まなかったので一度捨てて、修士課程時代に近世哲学の研究者が、ドイツ観念論系の哲学者とフランス革命との関係に言及していたことから、「あっ、やばい。自分はそこらへんにこだわりがあったはずなのに、読んでいない」と思って、買い直した。しかもそこから7年ぐらい経ってようやく読み進めているのだ。みなさんにもそんな経験はないだろうか。

 

『神々は渇く』はフランス革命期に「自由・平等・同胞愛」を理想に純粋な正義を求めた人々の末路を描いた小説であり、いわゆる(因習とは逆の方向性をもった)「社会正義」が行きつく先を暗示しているのであろうか(まだ全部読んでいない)。

 

とはいえ、「純粋な理想」ではない「現実」とはどのようなものかと尋ねれられたら、私の場合、映画『God Father』シリーズを見よと答えるだろう。

 

『神々は渇く』が革命期のフランスが舞台であり、映画『God Father』シリーズの舞台は、、20世紀初頭のアメリカとイタリアであるので、比較しようとしている訳ではない。そうではなくて、現実社会にある諸勢力の血族、分布図、成り立ち、紛争とその解決、男女の生き方などを描いている点で、あまりにも政治的な急進主義に固執する前に、現実の社会を知る重要な作品であると言えるだろう。

 

政治的急進主義に魅せられてしまう人、特に若い人に対し、自分に伝えられることとして、この映画『God Father』シリーズの良さを知らせたいのである。しかも、Amazonプライムの無料体験の枠内で見られるのである(念のため、規約をちゃんと確認してね)。

 

 God Father 

 シリーズの第一作であり、イタリアのシチリア島生まれマフィアのボス、ドン・コルレオーネとファミリーのビジネスと生活を描いたもの。

  

物語は、法で裁けぬ悪に制裁を加えるために、一般人がドンに助けを求めるシーンから始まる。ここで既に「法で裁けぬ悪」の問題と、その際に頼る相手は誰なのかという問題が出てきている。ドンは移民社会に根差したマフィアとして描かれている。

 

ある日、麻薬ビジネスに手を染めるか否かをめぐって、それに反対したドンは敵対する組織から襲撃される。

 

ドンが療養している間、長男(?)のソニーも敵対組織に殺害される。かねてより夫による妹に対するDVに怒っていたソニーは、殺害されてた当日も、妹から助けの電話を受けて車を飛ばして向かっている途中で射殺される。この電話は、妹の夫が仕掛けた罠だった。

 

ソニーのキャラでおもしろいのは、自分も結構DVっぽいような男でありながら、自分の妹に暴力を振るった男には、暴力で制裁を加えるのである。女性を守っているのか、傷つけているのか分からない愛すべきキャラクターであり、去勢できない男性の姿を見ることができるだろう(笑)。

 

ドンの襲撃後、堅気の生活を続けていたマイケル(アル・パチーノ)がだんだんとファミリーのビジネス、つまりマフィアの稼業に足を踏み入れて行く。

 

芸能人とマフィア、マフィアと警察との癒着や汚職など社会がまだ未分化であったアメリカ社会の裏が描かれている。

 

移民として渡ってきたマフィアは、言語や宗教(カトリック)など、アメリカと故郷イタリアの二つの世界を持っており、私には二重に異文化であると感じた。現在でも問題となっているアメリカにおける移民のかつての姿の一端を知ることができるだろう。

 

教会で洗礼のシーンの背後には、マフィアの暴力性が重ね合わされる演出がなされ、神父の言葉を一語一句裏切るあたりに「現実」の社会を感じることができるだろう。イタリアだけに、マキャベリな雰囲気を漂わせている。(マキャベリの『君主論』も再読したい。若い方も読むべきだ。岩波文庫に入っている。)

 

ドンが亡くなる前に息子のマイケルに言った言葉が印象に残る。

 

お前には、この稼業を継いでほしくなかった。

だが、これからはマフィアのドンではなく、「上院議員」や「知事」という名前で、人々を支配して欲しいと告げるのである。

 

上院議員」になったら美辞麗句を用いて、あらゆる意味で自分に得する方向へ持って行くのだろうか。自己に有利な状況では権力をふるい、自分が権力を失ったら、権力は悪であると反権力のふりをして。

 

権力の成り立ちを教えてくれる作品なのである。是非おすすめしたい。

 

 

 

 

 

日経整理・インデックス投信の生みの親ジョン・ボーグル氏89歳で死去ー平成31年1月26日(土)

日経整理・インデックス投信の生みの親ジョン・ボーグル氏89歳で死去ー平成31年1月26日(土)

 

今週のまとめは、この記事のみ。

 

平成21年1月22日(火)7面・金融経済欄

「インデックス投信に革命」、「バンガード創業者 ジョン・ボーグル氏死去」、「長期で活用を」投機に警鐘という記事のまとめ

 

・「インデックス・ファンドの父」であり、米資産運用会社バンガードグループの創業者のジョン・ボーグル氏が89歳で死去した。

 

・ボーグル氏は、株価指数に連動した低コストのインデックス投信を築きあげた。

それまでは、ファンド・マネージャーの判断で運用するアクティブ運用が主流であった。

・ボーグル氏は、1929年の世界大恐慌で財産を失った一家に生まれ、幼い頃から新聞配達をしていた。

プリンストン大学の卒論は「理想の投信はインデックス・ファンド」が論旨だったという。それが運用会社の経営者に注目されて、就職したという。

・記事によると、「低コストのインデックス投信はアクティブ運用に勝てる数学的な裏付けがある」というボーグル氏の信念をファンド運用の歴史が証明したという。

・ボーグル氏流のインデックス投信が世界の主流になっていったが、上場投資信託ETF)を投機や短期売買の対象にすることには反対で「インデックス型は長期投資で活用べき」とした。

ウォーレン・バフェット氏もボーグル氏のことを「最もアメリカの投資家に貢献した人物」であると評したという。

 

私はボーグル氏のことを金融コンサルタント木村剛『投資戦略の発想法 2010』ナレッジフォア、平成21年)で知った。

 

この本に投資を始める前に読むべき本として、ボーグル氏の『インデックス・ファンドの時代ーアメリカにおける資産活用の新潮流』東洋経済新報社)が挙げられており、経済学者として著名なサミュエルソン氏がボーグル氏を讃えていたとの解説が載っていた。

 

もっとも、同書には「インデックス・ファンドの生みの親」としてバートン・マルキールプリンストン大学の経済学者)を挙げており、その著ウォール街のランダム・ウォーカー』日本経済新聞社)が紹介されていた。

 

ちなみに私はまだどちらも読んだことがないが、今年中に読むという期限を切っておきたい。

日経整理ー平成31年1月19日(土)晴れ

日経整理ー平成31年1月19日(土)晴れ

 

本当は、先週やろうと思っていたのだが、しんどくて出来なかった。

だから、先週の分も含めてこの週末に日経を整理しよう。

(*なお記事を書いた後は、原則切り抜きを捨てます。部屋の整理のため。持物を多く持たない暮らしにしたいからです。)

 

1月9日(水)夕刊?

「こころの玉手箱」 みずほFG会長 佐藤康博氏 第三回目

入行して8年目にニューヨークに転勤となった話。一度海外で働いてみたい私にとって興味のある記事だ。

氏は「アセットファイナンス」の部署に配属されたとのことだが、英語は全くダメなまま赴任したらしい。直属の上司が英語の得意な国際派で、すべて英語で打ち合わせを取り仕切っていたという。

ところが、その上司が引き抜きで米系の金融機関に行き、重要案件が佐藤氏の責任になったという。急遽、弁護士や会計士などの関係者と英語で打ち合わせをしないといけないことになったという。その時のことを振り返り氏は「高速道路を疾走するかのようだった会議は、トラクターの走る農道に転じた」という。

ああ、みずほFGの会長でも仕事で苦しんだことがあるんだなと思うと、今の私も気持ちが楽になる。

結局、3か月後にはなぜか、英語が聴き取れるようになり、言いたいことも通じるようになったということだ。

 

朝刊 5面 くらしナビ欄

「ライフサポート」つらい腰痛 若い世代も

会社生活に役立つ記事。

トイレに立ったり、体操したりせよとのこと。

 

1月10日(木)18面マーケット商品欄

「ぷりずむ」

バブル崩壊後、非正規社員の代表的な職種であった事務職の正社員の求人が増えているという。1つには、派遣社員の不足、もう1つには、3年が上限の派遣を雇うぐらいならはじめから直接雇用にしようというのが主な理由らしい。

私がハローワークに行っていた頃は、「事務の就職は難しい」と言っていた。いまも中途採用求人倍率は0.5倍以下ということだが、まあ求人は増えているとのこと。

 

24面 PERSOLという人材会社の働き方についての全面広告

米倉誠一郎氏の講演

松下幸之助も「経営の神様」ではないことを最近発見した」。多くの失敗を乗り越えた人だからだという。

こういう発言は、「何をいまさら」と言われそうでなかなか言えないものだが、正直に言っている点には好感をもった。

 

アクセンチュア代表取締役社長 江川氏

人材会社のパーソルの担当者から、長時間労働が恒常化しているアクセンチュアには「評判が悪すぎて、優秀な人を紹介できない」と言われたそうだ。その、後改革したとのことだが、思わず笑ってしまった。「優秀な人」が多くいそうなアクセンチュアがそんなことを言われていたことに、爆笑です。

 

1月18日(金)夕刊13面 社会欄

安田講堂事件50年 活動家らのいま」

東大安田講堂事件から50年とのこと。生まれていなかったが、もうそんなに経ったのか。記事に登場する元活動家らはもう70代。当時、東大の助手であった最首悟氏に至っては80代で、今日の朝のTVに出ていた。バックの本棚は思想っぽい本が並んでいた(氏と撮影場所は関係なかったのかも知れないが・・・)。

竹内洋氏(社会学者)の「理屈より暴力行動」「反知性主義を呼び込んだ」というコメントは、幻想を持たない点でひとまず好感が持てたのだが、、「運動に敗れ、人生を棒に振ったインテリ層が社会の様々な職業に分散することで、文化の底上げに一役買った側面もある」という点は、他人事とは思えない悲しみを覚えた。もちろん私は全く活動家ではなかったのだが、「人生を棒に振った」という点は共通していると感じた。就職も難しかっただろう。

 

記事の見出しでは「社会への声 上げ続ける」となっており、それはそれで自由にしたらいいのだが、社会活動だけでなく、宗教的な安心立命の境地や死生観など、70代となった今だからこそ分かる人生全体の境地をもっと掘り下げた記事を読みたかった。問題はそれがあるのかどうかだ。

 

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』★★★★☆

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』(大和出版、2016年)★★★★☆

 

連日残業の続く「デスマーチ」状態の日々。全体を考えず細部ばかりつつく仕事のやり方で困らせて来る先輩社員。長くいてるだけの社員のいびりのような指摘。非正規で職歴の浅い者には常に直面させられる問題である。

 

「自分はこんなことをするために生まれてきたんじゃない」と思いつつも、「じゃあ、何のために生まれてきたのか?」、「目の前の仕事に取り組むことこそが成功への道はないのか?」「ここをやめて生きていけるのか?」「まだ十分に仕事ができないから責任転嫁しているだけではないのか?」」「社会とはそんなところだ!」と自分を納得させつつ生きている。

 

そんな仕事上の心の悩みに役立つのが、この本だ。タイトルから想像されるのとは異なり、単なる20代に上昇志向を説いた本ではなく、むしろ職業人生の戦略本ともいうべきものだろう。

 

「「スジの悪い仕事」に時間をとられるな」の項目では、「スジの悪い仕事」の判断基準として、「成長につながるか」「評価につながるか」のという2つの着眼点を読者に提示する(60頁以下)。

 

「どこへ行っても通用するスキルとは何か?」の項目では、スキルを三種類に分けて、読者の判断を助ける。読者は日々の業務にこれを適用し、打ち込むべきか判断すればよい。

・第一種のスキル:その会社の中で通用するスキル

・第二種のスキル:その業界の中で通用するスキル

・第三種のスキル:業界を問わず、世界のどこでも通用するスキル

「仕事を弁別する際には、この第三種のスキルを獲得できるタスクなのかどうかということが、大変重要なポイント」(74頁)

 

第一種のスキルは、いずれ「不良資産化」する。なぜなら、会社の寿命は短くなってきているからだ。自分の定年まで会社があるとは限らない状況であることを真剣に考えるべきだという。

 

他にも「「上司は偉い」という信条を手放してみる」(89頁)、「“マジメな不良”のススメ」(111頁)など、つい生真面目になりがちな自分にとって参考になる項目が多い。

 

最後に、現在の私にとって共感できる文章を挙げておこう。

 

「実際には業務プロセスや役割分担、あるいは商品やサービスそのものに問題があるはずなのに、成果が出ない責任がすべて若い個人に負わされるわけです」(123頁)

 

私は若くはないが、この年の新人にも共通する悩みである。

 

「20代半ばの頃のことですが、一人ではとてもさばけないほどの業務量を任され、連日連夜深夜残業でも仕事は終わらず、ミスが頻発していてために、精神的に極めて不安定になった時期がありました」(同頁)

 

企業側の人件費不足の責任転嫁をしていることもないだろうか。

 

「いまから考えれば、お粗末な業務フローとバランスを欠いたチーム体制・役割分担がその原因だったのですが、ウブだった当時の私は、これほどまでに仕事が遅く、ミスを連発する自分はビジネスパーソンとして不適応者なのではないかと悩み、いっそパン屋にでも職替えをするべきか?と悩んでいたのです」(同頁)

 

私はパン屋になっても、売り上げを達成できず、いびられそうだが・・(生計を立てていけているパン屋さん、尊敬致します)。いつか冷静に分析し、改善できるコンサルのようなことをができるようになるのだろうか。

 

このページだけでも今の私には購入に値すると本だと思って、今月ビジネス書を買う予定はなかったのだが、財布のひもをゆるめた。

 

購入したばかりで、まだすべて読んでいないが、今の状況から逃げられなくても、自分の現在地を知り、仕事人生に一筋すじでも光を見出すためにおススメできる一冊である。