Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

Amazonプライムで映画『God Father』シリーズをー平成31年1月27日(日)晴れ

 Amazonプライムで映画『God Father』シリーズをー平成31年1月27日(日)晴れ

映画『God Father』を無性に見たくなった。

映画を見ていると現実逃避できるからということが見たい理由だが、もう一つには今少しずつアナトール・フランスの『神々は渇く』という小説を読んでいるからだ。

 

この小説も例によって呉智英氏の著作で言及されていることで知ったと記憶しているが、高校の時に岩波文庫版で買ったのはいいが、それから20年近く読んでいなかった。正確に言うと、読まなかったので一度捨てて、修士課程時代に近世哲学の研究者が、ドイツ観念論系の哲学者とフランス革命との関係に言及していたことから、「あっ、やばい。自分はそこらへんにこだわりがあったはずなのに、読んでいない」と思って、買い直した。しかもそこから7年ぐらい経ってようやく読み進めているのだ。みなさんにもそんな経験はないだろうか。

 

『神々は渇く』はフランス革命期に「自由・平等・同胞愛」を理想に純粋な正義を求めた人々の末路を描いた小説であり、いわゆる(因習とは逆の方向性をもった)「社会正義」が行きつく先を暗示しているのであろうか(まだ全部読んでいない)。

 

とはいえ、「純粋な理想」ではない「現実」とはどのようなものかと尋ねれられたら、私の場合、映画『God Father』シリーズを見よと答えるだろう。

 

『神々は渇く』が革命期のフランスが舞台であり、映画『God Father』シリーズの舞台は、、20世紀初頭のアメリカとイタリアであるので、比較しようとしている訳ではない。そうではなくて、現実社会にある諸勢力の血族、分布図、成り立ち、紛争とその解決、男女の生き方などを描いている点で、あまりにも政治的な急進主義に固執する前に、現実の社会を知る重要な作品であると言えるだろう。

 

政治的急進主義に魅せられてしまう人、特に若い人に対し、自分に伝えられることとして、この映画『God Father』シリーズの良さを知らせたいのである。しかも、Amazonプライムの無料体験の枠内で見られるのである(念のため、規約をちゃんと確認してね)。

 

 God Father 

 シリーズの第一作であり、イタリアのシチリア島生まれマフィアのボス、ドン・コルレオーネとファミリーのビジネスと生活を描いたもの。

  

物語は、法で裁けぬ悪に制裁を加えるために、一般人がドンに助けを求めるシーンから始まる。ここで既に「法で裁けぬ悪」の問題と、その際に頼る相手は誰なのかという問題が出てきている。ドンは移民社会に根差したマフィアとして描かれている。

 

ある日、麻薬ビジネスに手を染めるか否かをめぐって、それに反対したドンは敵対する組織から襲撃される。

 

ドンが療養している間、長男(?)のソニーも敵対組織に殺害される。かねてより夫による妹に対するDVに怒っていたソニーは、殺害されてた当日も、妹から助けの電話を受けて車を飛ばして向かっている途中で射殺される。この電話は、妹の夫が仕掛けた罠だった。

 

ソニーのキャラでおもしろいのは、自分も結構DVっぽいような男でありながら、自分の妹に暴力を振るった男には、暴力で制裁を加えるのである。女性を守っているのか、傷つけているのか分からない愛すべきキャラクターであり、去勢できない男性の姿を見ることができるだろう(笑)。

 

ドンの襲撃後、堅気の生活を続けていたマイケル(アル・パチーノ)がだんだんとファミリーのビジネス、つまりマフィアの稼業に足を踏み入れて行く。

 

芸能人とマフィア、マフィアと警察との癒着や汚職など社会がまだ未分化であったアメリカ社会の裏が描かれている。

 

移民として渡ってきたマフィアは、言語や宗教(カトリック)など、アメリカと故郷イタリアの二つの世界を持っており、私には二重に異文化であると感じた。現在でも問題となっているアメリカにおける移民のかつての姿の一端を知ることができるだろう。

 

教会で洗礼のシーンの背後には、マフィアの暴力性が重ね合わされる演出がなされ、神父の言葉を一語一句裏切るあたりに「現実」の社会を感じることができるだろう。イタリアだけに、マキャベリな雰囲気を漂わせている。(マキャベリの『君主論』も再読したい。若い方も読むべきだ。岩波文庫に入っている。)

 

ドンが亡くなる前に息子のマイケルに言った言葉が印象に残る。

 

お前には、この稼業を継いでほしくなかった。

だが、これからはマフィアのドンではなく、「上院議員」や「知事」という名前で、人々を支配して欲しいと告げるのである。

 

上院議員」になったら美辞麗句を用いて、あらゆる意味で自分に得する方向へ持って行くのだろうか。自己に有利な状況では権力をふるい、自分が権力を失ったら、権力は悪であると反権力のふりをして。

 

権力の成り立ちを教えてくれる作品なのである。是非おすすめしたい。