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書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

年越し中村天風ー『幸福なる人生』令和4年12月31日(土)

年越し中村天風ー『幸福なる人生』令和4年12月31日(土)

「追い詰められたとき、生きる道を見出す時間が待ちきれなくなって、大抵は自分の命を落としてしまうようなばかげたことをやっちうまうんです。」(『幸福なる人生』PHP、2011年、184頁)

 

院生時代には友人と年越し万葉集をしたことは遠い昔。

今年は昨日から中村天風の『幸福なる人生』を読んでいる。

中村天風『幸福なる人生』

動機

中村天風さんの名前はもちろん知っていたが、その影響下に入りたくなかったので近づかなかった。実業界に信奉者が多い印象があり、そのお仲間になりたくなかったからだ。

だが、ここにきて自分の心のクセのようなものが客観視できるようになり、どうしても消極的に考えてしまう自分に嫌気がさし、積極的な心を持ちたいと思い、天風さんを手に取った。

 

中心にあるメッセージ

人間はこの世に苦悩するために生まれてきたわけではない。

苦しみたくなければ、6つの力を豊富にしなければならない。

①体力、②胆力、③判断力、④断行力、⑤精力、⑥能力

身心を統一して生きていかなければならない。その方法がヨガのクンバハカ法なのである。心の積極化がすべての基礎である。

メモ

・6つの力を充実させることが大事。

・睡眠は神聖な時間であることを知れ。

・鏡を使って自分に語りかけろ。

・消極的な言葉は使うな。

・心の積極的な人と接せよ。

・何事にもベストを尽くせ。

・ファイティング・スピリットで行け!ガムシャラということだ!

・取り越し苦労をするな。

・人間いつかは死ぬ。

 

天風さんの軌跡

日露戦争時代、軍事探偵として、中国大陸に渡っていた。

火薬輸送列車に潜り込んだ話はミッション・インポッシブルみたいで秀逸(185頁以下)。

処刑されそうになった際にも、気がみなぎっていた。

にもかかわらず、日本に帰国し、病が告げられたら、しぼんでいったという。

「強かったはずの私が弱い私になってしまうとは思わなかった」(188頁)

そこで天風さんのおじに相談すると、

「男の恥さらしめ、強う持て」

と言われたのだが、これで強くなれれば何の苦労もいらない(189頁)。

そこで仏教界、キリスト界問わず、尋ね歩いたが、遂に安心は得られなかった。

ここが天風さんのすごいところなのだが、日本で得られないならということでアメリカに渡った。アメリカでも、元の自分に戻る方法は得られず、ヨーロッパにも渡ったが駄目だった。

「感覚があって生きている人間である以上、丈夫なときにだって、熱や胸苦しさを感じたことがあったに違いないのに、そのときにはちっとも気にしなかった。それが今度はわずかなことも気にするようになったのは結局心が弱ってきたからだ。それをもとのように、要らないものは感じないような人間になることはわけないと思ったが、わけないどころじゃない、これを世界に求めて、誰も教えてくれる者がなかったのであります。」(195-196頁)

もう万事休す。日本に帰ろうと思い、寄港地エジプトで出会ったカリアッパというインドの行者に連れられてインドに渡った。そこでヨガの哲学に出会い、「神経反射の調節を為し得る方法がインドにあった」(202頁)という。

そこから我々の知る天風さんが誕生するわけである。

私が天風さんに興味を惹かれるのは、軍事探偵時代の天風さんでもなく、「成功哲学」を説き、財界に信奉者をもっていた時代の天風さんでもなく、あんなに強かった自分がいつの間にかしょぼんとした自分になり、弱気になり、それを克服しようとして産みの苦しみを味わっていた時代の天風さんである。凡夫われである。

天風さんもこの時は凡夫だったのである。

凡夫我、来年こそは積極的な心を持ち、残された人生に光明を見出したい。

 

井上角五郎、海老名弾正、頭山満徳富蘇峰尾崎行雄などが登場し、人に恵まれた人生だったのだなとも思う。