Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

大杉栄の吉野作造評(というか酷評)『大杉栄評論集』よりー令和5年1月28日(土)雪

大杉栄吉野作造評(というか酷評)『大杉栄評論集』よりー令和5年1月28日(土)雪

「吉野先生は個人的自由を徹底的に進めれば無政府主義になるから悪いという。しかし先生は無政府主義がなぜ悪いかということについては一言もいわない。」(『大杉栄評論集』(岩波文庫、p.155))

 

少し前に、本当に欲しいものってないよねって書いたことがある。でも40代にして、大杉栄の本がいろいろと欲しくなった。もう一度俺の中の社会思想が目覚め始めた。でも全集や著作集を買うと、人生が重くなる。神出鬼没が大杉栄の印象だよね。それに見合った態度を貫きたい。だから今はこの文庫本で我慢する。思想の本を読み始めたあの頃のように。

book-zazen.hatenablog.com

大杉栄「盲の手引きをする盲ー吉野博士の民主主義堕落論」(『文明批評』一巻二号,

一九一八年二月号)

大杉栄吉野作造も、いまの「保守」や「右派」が距離を置く相手だろう。でも、二人は異なっているのである。大杉は「無政府主義者」で、吉野は「民本主義者」だからという名称の問題などではない。本論を読むと、大杉は吉野とは根本的に相容れない人物であることが分かるだろう。

 

大杉は、一九一八年『中央公論』(一月号)に載ったかの有名な吉野作造の論文「民本主義の本義を説いて再び憲政有終の美を済すの途を論ず」を標的にして、吉野を含む政治学者で新聞や雑誌に寄稿するような人物たちの言論について、「僕らはまず僕らの要求に応じて現れて来たこの新政治理論に対して、すぐさまその外観だけに惚れこまずに、果たしてそれがほんとうに僕らの要求にぴったりと合うものであるかどうかを調べて見なくちゃならん」という。(p.145)

大杉にとって不満なのは、吉野が無政府主義について先天的に害悪としているくせに、本物の政治論を展開しているような態度を取っていることである。

「吉野先生は個人的自由を徹底的に進めれば無政府主義になるから悪いという。しかし先生は無政府主義がなぜ悪いかということについては一言もいわない。」(p.155)

結論として大杉は、吉野に代表されるような政治学者を批判する。

「そんな科学的政治学や科学的政治学者は、人間として目覚めかけた僕らの要求には一文の値打ちもないものである事だけを、大声疾呼しておく」(p.157)

 

book-zazen.hatenablog.com