開かれた社会とその敵とは?ー令和二年十月十七日(土)雨
「ポパーについては言い古されたジョークがあった。『開かれた社会とその敵』は『その敵の一人によって書かれた開かれた社会』という題にすべきだった、と。」
There was an old joke about Popper: The Open Society and Its Enemies should have been titled The Open Society by One of Its Enemies.
(ジョン・ホーガン(竹内薫訳)『科学の終焉』徳間書店、1997年。
John Horgan "The End of Science" BROADWAY BOOKS, 1996)
カール・ポパーは、オーストリア出身の哲学者。科学哲学に優れ、社会哲学においてはファシズムと共産主義などの全体主義に対する「自由な社会」の擁護に力を尽くした。
『科学の終焉』の著者ジョン・ホーガンはアメリカの科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」の専属ライターで、本書は著名な科学者を中心にインタビューしたもの。
「独断主義を痛烈に非難したポパー自身が、病的なほど独断的で、学生たちに忠誠心を強要している」(58頁)
というものだった。
本に書かれてある内容や自己主張と、実際の著者の人格は、まずもって別なのである。
学校の礼儀が嫌いでライブハウスに出入りしたら、先輩バンドの方が偉そうだったなんてことはありそうな話だ。
「酒は飲んでも呑まれるな」。学者やその著作への距離の取り方は、学ぶことと同じぐらい大切なのである。