Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。

「渋い声」か、それとも「老人の読経」かそれが問題だーボブ・ディラン『ラフ&ロウディ・ウェイズ』ー令和二年七月十八日(土)

「渋い声」か、それとも「老人の読経」かそれが問題だーボブ・ディラン『ラフ&ロウディ・ウェイズ』ー令和二年七月十八日(土)

 

昔、聴いていた洋楽のアーティストを久しぶりに購入することはないだろうか?

 

去年は、アリス・イン・チェインズの『レーニア・フォグ』を買って、1年経っても愛聴している。ギターリフがかっこいいし、歌声も好きだ。私が真剣に聴いていたのは1995年前後、カート・コバーンは亡くなっていたが、レイン・ステイリーは存命だった。2Pacもまだ撃たれていなかった。

 

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あれから25年。その間に、(レンタルだけど)ボブ・ディランの"Blowin in the Wind"や"Like a Rolling Stone"なども聴いた。レンタルだと他に、The Clashの"London Calling"なども聴いた(Johnny Rottenの自伝を読んでいたから、ClashよりもPistolsやP.I.Lの方を好んだ)。

 

 

購入動機

リチャード・ライト正岡子規の記事を読んだおかげで、アメリカ現代詩に興味を持つことができた。ビート世代でギンズバーグ、ケルアックなどとも関係があり、のちに京都の大徳寺坐禅修行をしたゲーリ・シュナイダー(Gary Snyder, 1930-)に、かねてより興味をもっており、アメリカ現代詩を読んで見たかった。

体系的に知りたいと思ったから、このタイミングで原成吉氏の『アメリカ現代詩入門』(勉誠出版、2020年)を購入し、読んで見た。副題は「エズラ・パウンドからボブディランまで」であったから、ボブ・ディランを意識していた。

 

そこに日経の全面広告NIKKEI The Style Advertising(2020年7月12日(日))の"Rock Times, 2020 July"にポピュラー音楽研究の佐藤良明氏のインタビューが載っていた。4月の来日公演は中心となったが、オリジナル楽曲の最新アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』がリリースされたという。

 

佐藤氏は、前作『テンペスト』までの詩を翻訳した「The Lyrics」という書籍の翻訳者ということである。

 

佐藤氏によると、ディランの最新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』は、「不自由な枠を全て外し至高を極めた最新作であり」、「詩とメロディは分離して、もはやディランはほとんど歌って」おらず(?)、「それでも一発で親しめる音楽に包み込まれている」とのこと。

 

期待して聴いてみた。

 

 25年前。あの頃聴いたボブ・ディランの声は若々しかった。でも、今回楽しみにしていたボブ・ディランの声は、さすがにもう老人の声で、良く言えば、「渋い声」、悪く言えば「じいさんの読経」みたいなものだった。

 

アルバムの裏ジャケットは、大統領ケネディの写真が・・・・。デッド・ケネディーズだったら嬉しかったのに。特定の大統領を信奉できるのかディランは?そこからも外れた詩人であって欲しかった。

 

大統領ケネディのことを歌った"Murder Most Foul"(「最も卑劣な殺人」)では、"Freedom, oh freedom, freedom ovee me"(「自由よ、ああ自由よ、わたしのもとへ」)ってな感じで歌っているし(歌詞対訳は中川五郎氏による)。自由が人類の到達点という哲学なのだろか?

 

第一パラグラフ5行目では、

 

"Being Led to the slaughter like a sacrificial lamb"

 

とあり、呉智英『危険な思想家』メディアワークス、1998年)を通過した目からすれば(しかも10代の頃に)、ディランに手放しで共感できるほどの詩(歌詞)ではない。

 

呉氏は、「反戦フォークの女王ジョーン・バエズ」が原曲を歌った「ドナ・ドナ」について、これが「一九六〇年代後半、日本でもアメリカでも若者による反体制運動が続発していた。これが差別摘発運動につながるものである」ことを指摘し、それにも関わらず、運動の中で好んで歌われた歌詞の中にこのような一節があることを「看過できない」(呉・上掲書、77頁)としている。

Calves are easily bound and slaughtered

Never kowing the reason why

But whoever treasures freedom

Like the swallow has learned to fly.

 ("DONA DONA", English Words by Sheldon Secunda, Teddy Schwartz, Arthur Kevees)

自由を抑圧しているという例えとして同様のものと言うべきか?

 

聴き始めてから1日しか経っていないから、これ以上のことは言えないが、この2枚組アルバムの中でおススメするなら1枚目のNo.2"FALSE PROPHET"(偽預言者)がいいかも知れない。

 

ボブ・ディランの『ラフ&ロウディ・ウェイズ』。これを79歳になったディランの「渋い声」とするか「老人の読経」とするかそれが問題だ。

 

でも久しぶりに洋楽購入の楽しさ・ドキドキ感を味わったことには感謝。

興味ある方はどうぞ。

ラフ&ロウディ・ウェイズ

ラフ&ロウディ・ウェイズ