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書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。

「大人」そのものだった早坂茂三氏ー早坂茂三氏『田中角栄と河井継之助、山本五十六-怨念の系譜』(東洋経済新報社、2016年) その1

「大人」そのものだった早坂茂三氏ー早坂茂三氏『田中角栄河井継之助山本五十六-怨念の系譜』(東洋経済新報社、2016年) その1

 

「敗戦の二年後、政治家となった田中角栄は、無名時代の十年間に住宅問題や道路整備、電源開発を柱にした二十五件の議員立法で戦後復興、祖国再建の布石を打った。その延長線上に『日本列島改造計画』がある。明治維新いらい、表日本に偏重した工業出荷額を日本全土にバランスよく再配置し、高速交通体系を整えて、国土を一日交通圏、一日経済圏、一日生活圏に再編成する。そして大都市の過密と地方の過疎を同時解消したい。同時に中国との共存共栄を実現し、エネルギー源の多角的分散を図り、国際石油資本の鎖を解き放ち、日米同盟を基軸として相対的に独立した国家戦略を発動する。これが雪国の貧家を出自とする角栄の存念であった」(16頁、18頁参照)

 

 

早坂茂三氏は、1930年に北海道は函館市に生まれて、早稲田の政経を出たあと、新聞記者として東京タイムズに勤務し、政治部記者時代に出会った田中角栄氏の秘書として23年間過ごした人物である。(著者紹介を参考にして作成)

 

本書は、2001年に刊行されたものの改題・復刊である。

 

田中角栄氏といえば言わずと知れた、庶民から総理大臣になった政治家である。「コンピュータ付きブルドーザー」と言われて、戦後政治に大きな足跡を残していった。私の世代では、氏の娘たる田中真紀子氏の方が有名であろうし、今の20代の方はもはや田中真紀子氏も知らないのではないだろうか。

 

購入動機

私は戦後日本の政治家で特に好きな人はいない。子供の頃からそうだった。

そんな私がなぜいま田中角栄氏に関する本を読むのだろうか。

 

一つ目の理由は、田中角栄氏が残した足跡を、大人になった今の目で、しっかりと見たいからである。子供の時、早坂氏がトーク番組に出ていた記憶がある。その時に見た早坂氏は、「大人の男」そのもので、エレキ・ギターが好きだった自分とはちがう世界の住人のように思えた。

 

二つ目は、土木工学から天下国家までを論じる藤井聡氏が土木というものの重要性に気づかせてくれたことである。国土の発展問題、新幹線などの交通網の問題など、子供時代の自分には泥臭く、近寄りたくない問題が思想にとって重要であることを気付かせてくれたし、それは戦後の政治史と密接な関係を持っていることを教えてくれたのである。

ロッキード事件金権政治、土建国家など田中角栄氏に付きまとうイメージの奥に、一人の日本人としての志や信念を見てみたいのである。

 

三つ目は、明治維新150年の際に、新聞広告で目立った明治維新に対する評価に対して違和感を持ったことである。左派的な歴史観のみならず、明治維新で敗北した佐幕派の観点からの明治維新批判も大きく取りあげれらていた。この淵源と流れをしっかり確認したいということも幕末から戦後を貫く流れを扱った本書を手に取った動機である。

 

陽明学をバックバーンにした河井継之助については、司馬遼太郎の小説『峠』を読んでいたので、本書で初めて知ることは少なかったが、石原莞爾河井継之助のことを論文にしていたことは、本書で初めて知った(『峠』に書いてあったのかな?覚えていない)。

「後の陸軍参謀石原莞爾は、陸軍大学の卒論テーマに「河井継之助の戦術」を選んでいる。」(73頁)

 

まだ全部読んでいないが、ここから広がり深まっていく視野が楽しみである。また続きを書きたい。

 

田中角栄と河井継之助、山本五十六