呉智英『日本衆愚社会』(小学館新書、2018年8月)
呉氏が学生時代から考察してきたような問題(ロシア革命、文化大革命、憲法、民主主義)から、最近世間をにぎわした話題(小保方氏、シールズ、ポピュリズム)までを扱ったものである。
久しぶりにうれしい本の出版だ。『サルの正義』や『賢者の誘惑』あたりを読んでいた頃を思いだした。もう呉氏は老年、私は中年となった。呉氏は私の父の世代にあたる。
自己の思想を「保守」ではなく、「極左封建主義」と規定している点にはユーモアと、時勢に流されない呉氏の矜持、さらに呉氏が若い時から老年まで失うことのなかった精神の核みたいなものを感じた。このネーミングセンス尊敬します。
このサイトにそのコラムが載っている。
(以下、追記予定)
キーワード:支配/被支配、革命/反革命、例外状況、統治
ポピュリズムについて
呉氏は1995年に刊行した『賢者の誘惑』においても、既に「民衆主義」に「ポピュリズム」というルビを振って教育者や教育学者を批判をしていた。また、現行の憲法を考える際に第9条ではなく、第15条第4項の「選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問はれない」という箇所を問題視し、「私が民主主義者・人権思想家に対して抱く根本的な疑問は、憲法を守れと言いながら、歴史への責任とか社会への義務とか人類の使命とか、何故平気で口走るのか、ということです。そんなことを国民に要求するのは、明らかに憲法違反なんです」(『賢者の誘惑』双葉社、1998年、120頁)。
今回の『日本衆愚社会』においてポピュリズムに関連するのは「いまこと「選挙権メ免許制度」を」(46頁~)や「「ポピュリズム」すなわち愚民主主義について」(56頁~)である。