Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』★★★★☆

デスマーチからの生還ー山口周『トップ1%に上り詰めたいなら、20代は“残業”するな』(大和出版、2016年)★★★★☆

 

連日残業の続く「デスマーチ」状態の日々。全体を考えず細部ばかりつつく仕事のやり方で困らせて来る先輩社員。長くいてるだけの社員のいびりのような指摘。非正規で職歴の浅い者には常に直面させられる問題である。

 

「自分はこんなことをするために生まれてきたんじゃない」と思いつつも、「じゃあ、何のために生まれてきたのか?」、「目の前の仕事に取り組むことこそが成功への道はないのか?」「ここをやめて生きていけるのか?」「まだ十分に仕事ができないから責任転嫁しているだけではないのか?」」「社会とはそんなところだ!」と自分を納得させつつ生きている。

 

そんな仕事上の心の悩みに役立つのが、この本だ。タイトルから想像されるのとは異なり、単なる20代に上昇志向を説いた本ではなく、むしろ職業人生の戦略本ともいうべきものだろう。

 

「「スジの悪い仕事」に時間をとられるな」の項目では、「スジの悪い仕事」の判断基準として、「成長につながるか」「評価につながるか」のという2つの着眼点を読者に提示する(60頁以下)。

 

「どこへ行っても通用するスキルとは何か?」の項目では、スキルを三種類に分けて、読者の判断を助ける。読者は日々の業務にこれを適用し、打ち込むべきか判断すればよい。

・第一種のスキル:その会社の中で通用するスキル

・第二種のスキル:その業界の中で通用するスキル

・第三種のスキル:業界を問わず、世界のどこでも通用するスキル

「仕事を弁別する際には、この第三種のスキルを獲得できるタスクなのかどうかということが、大変重要なポイント」(74頁)

 

第一種のスキルは、いずれ「不良資産化」する。なぜなら、会社の寿命は短くなってきているからだ。自分の定年まで会社があるとは限らない状況であることを真剣に考えるべきだという。

 

他にも「「上司は偉い」という信条を手放してみる」(89頁)、「“マジメな不良”のススメ」(111頁)など、つい生真面目になりがちな自分にとって参考になる項目が多い。

 

最後に、現在の私にとって共感できる文章を挙げておこう。

 

「実際には業務プロセスや役割分担、あるいは商品やサービスそのものに問題があるはずなのに、成果が出ない責任がすべて若い個人に負わされるわけです」(123頁)

 

私は若くはないが、この年の新人にも共通する悩みである。

 

「20代半ばの頃のことですが、一人ではとてもさばけないほどの業務量を任され、連日連夜深夜残業でも仕事は終わらず、ミスが頻発していてために、精神的に極めて不安定になった時期がありました」(同頁)

 

企業側の人件費不足の責任転嫁をしていることもないだろうか。

 

「いまから考えれば、お粗末な業務フローとバランスを欠いたチーム体制・役割分担がその原因だったのですが、ウブだった当時の私は、これほどまでに仕事が遅く、ミスを連発する自分はビジネスパーソンとして不適応者なのではないかと悩み、いっそパン屋にでも職替えをするべきか?と悩んでいたのです」(同頁)

 

私はパン屋になっても、売り上げを達成できず、いびられそうだが・・(生計を立てていけているパン屋さん、尊敬致します)。いつか冷静に分析し、改善できるコンサルのようなことをができるようになるのだろうか。

 

このページだけでも今の私には購入に値すると本だと思って、今月ビジネス書を買う予定はなかったのだが、財布のひもをゆるめた。

 

購入したばかりで、まだすべて読んでいないが、今の状況から逃げられなくても、自分の現在地を知り、仕事人生に一筋すじでも光を見出すためにおススメできる一冊である。