Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

日経メモー平成30年7月10日(火)

梅雨が明けて、夏の雲。

7月10日の日経は、私にとって興味深い記事だらけだった。

記事のメモはEVERNOTEという、何でも入れられるアプリに入れて、

自分だけで楽しんでおけばいいのだが、見られている緊張感がない。

そこで、ブログにメモしているのである。

 

1.「貿易戦争」と米経済 ケネス・ロゴフ氏(政経

5面経済欄に、ケネス・ロゴフ氏(ハーバード大学教授)のインタビュー記事が、掲載されていた。同氏は、国際通貨基金IMF)のチーフ・エコノミストを務めた人物だという。

 

・世界経済の成長は、堅調である。

アメリカ経済:ここ2~3年は3%を超える成長となる。

・トランプの政策の多くは支持できない。所得税の減税にも疑問があるが、法人税の簡素化は評価したい。

・米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げについて。新体制は好調だ。

ートランプは利上げを好まないだろう。だから、いずれ介入し始めるであろう。それは大統領選がある2020年ごろだと見ている。⇒そうなると、インフレや相場の急落を招く。

米中貿易戦争ついて。

アメリカほど自由貿易の利益を受けている国はない。

・中国が、貿易黒字でアメリカを搾取しているというナバロ大統領補佐官の主張は、はっきりと間違っている。中国は貿易赤字と無関係なのである。

・中国の問題は、知的財産権を盗み、技術供与を強要し、サイバー空間でスパイ活動をしていることである。これについては阻止する必要がある。

・中国製品の対米輸出に関税をかければ、アメリカの成長率が悪化する。

 

2.ポーランド民主化運動の指導者ワレサ(政治)

6面オピニオン欄は、ポーランドの元大統領で、有名な民主化運動の指導者ワレサのインタビューであった。「連帯」のワレサといば、詳しくは知らないが、名前ぐらいは知っている人も多いだろう。

 記事の半分は「ポピュリズム」、もう半分は中国の台頭のことだ。

ポピュリズム

・「ポピュリズム」が世界の変化を求めていること自体は賛成としつつも、世界をどのように改良していくのかが問題だとしている。

・「技術的な発展が国境の意味を失わせつつある」ので、グローバル化で起こりうる問題をリストアップし、どう防ぐべきか考えないといけないとしている。

 

*「ポピュリズム」について、単なるレッテル貼りに終始しない点はさすがだが、「技術的な発展が国境の意味を失わせつつある」という認識は、90年代のグローバリズム時代の言説のようだ。その後に出てきたのが現下の「ポピュリズム」なので、国境の意味が失われつつあると言っただけでは、2018年現在としては意味がないのではないか。むしろ、自由・民主主義が目指している個人の生命・自由・財産の保護のためには、一方で国境をまたぐこと、他方で国境を維持することが大事な手段だと考えている人々がいるからこそ、「ポピュリズム」が噴出するのではないか。少なくともその一因となっているのではないのか。

 

**2018.7.13 追記

中野剛志・柴山桂太氏のグローバリズム その先の悲劇に備えよ』(集英社、2017年)は、全体的にグローバリズム批判の書であり、ワレサのインタビューよりも参考になる。

柴山 技術の進歩、たとえばインターネットの出現で国境なき世界が到来したと言われることもあるけど、インターネットの未来だって、それを管理する政治権力のさじ加減でどうなるかわからない。

 国際政治学者のジョセフ・ナイは、インターネットのが「スプリンターネット(splinternet/分裂したインターネット)」に」なりつつあると書いています。これまえサイバー空間は国境の壁を越えていたけれど、スノーデン事件があってからは、各国がファイアーウォールを分厚くする流れが生まれている、これは中国やロシアに限った話ではないと。

中野 インターネットでさえも、そういったコントロールを国家が本気を出せばできるし、金融だって、貿易だって、人の流れも規制できる。

 グローバル化って、技術的要因だけでなく、各国の政治的選択の結果として進んだ部分が大きいんですよ。「グローバル化の流れそれ自体は止められない」って、なぜみんな言うんだろう。留められるし、実際止まっているでしゃないですか。」(同書、34頁ー35頁参照)。

 

 

 

 

EUについて

EUは時代に合っていない。新しいEUが必要だ。今みたいにEU内で権利主張するのではなく、権利と義務の両方を加盟国が尊重すべきだ。

EUと米国の共通基盤があってはじめて、中国と議論が始められる。

中国について

・問題は「西欧」の考え方をしたグローバリズムになるのか、中国型のグローバリズムになるのかだ。

・私は今の中国のような世界には加わりたくない。西欧の考え方へと加わるべきだ。

 

*中国の経済力と軍事力になびく国家が多い中で、「民主化」運動の指導者は、さすがに中国の問題点を見ている。当然のことだ。

 

3.LINEが「銀行」になる!?(金融・IT)

金融とテクノロジーの融合たる「フィンテック」など、金融や決済などがIT技術で、さらなる変革のときを迎えていることは、日経の読者なら、おなじみのことであるが、あのLINEが「銀行」みたいにるらしい(ちなみに私はLINEを使っていません)。つまり、「LINEペイ」で電子決済サービスを始めるというのである。最初の3年間は飲食店などから、手数料を取らず、端末の初期費用も0円とするらしい。

 これにより、手数料で稼いできて銀行のビジネスモデルの一角が掘り崩されることになるらしい。どんどん世の中変わっていくな。

 IT企業に就職したと思ったら、金融業もやっていたなんて、おもしろいじゃないか。

メガバンクの幹部も焦っているらしく、欧米列強から領土を切り取られていった清朝みたいだと例えている。 

銀行といば、一番良い就職先である。社会に出てやることと言えば、結局お金を稼ぐことである。ほかにもいろいろと仕事の意義はあるだろうが、結局のところ、金銭に換算されるのである。だとしたら、国や地域の中枢たる銀行に就職することが、一番良いのである。

 

だが、昨今の技術革新とベンチャー精神により、それが崩れようとしている。私は一生銀行業界と縁がないだろうが、非常に興味深く見ている。彼らはどうするのだろう。そのときこそ、彼らが本当に頭が良かったかどうか、変革時代に対応できる人物であったかどうかわかる時なのである。

 

ベンチャーやIT企業の動きもおもしろいが、この流れに銀行がどう対処していくのかが知りたい。何を考え、どのように対策を取るつもりであり、そのため日夜何をしているのか、何を勉強しているのかなどだ。

 

4.「私の課長時代」ーセイコーHD社長の中村吉伸氏(キャリア・仕事術)

14面・企業欄にはセイコーHD社長の中村吉伸氏が課長であった時代の失敗談が掲載されていた。それによると、株主総会の資料で大きなミスをしたらしい。それにより信用失墜したというが、いま社長なのだから、どこが失墜なのだろうか。

 

5.中国企業の革新力(中)ー「中国製造2025」(政治・技術)

以前「中国製造2025」(2015年発表)という産業政策があると書いたが、27面「経済教室」欄は、李春利氏(愛知大学教授)が「中国企業の革新力」について解説している。

 

ちなみに「経済教室」欄は、私が日経購読を決めた一つの理由となるシリーズである。定期購読後は、かえって毎日読まなくなった。テーマや解説者の好みがあるからである。とはいえ、やはり、これぐらいの文字数の記事は勉強になる。

 

アメリカは「中国製造2025」を目の敵にしている。

・「中国製造2025」で重点育成産業とされているのは、ハイエンド工作機械、ロボット、航空・宇宙、新エネルギー自動車(NEV)、新素材などである。

・記事では、フィンテックと新エネルギー自動車(NEV)が取り上げられる・

フィンテック:中国でのネット決済は独自に進化しており、欧米の後追いではない。「後発の利益」があるのだ。

・モバイル決済(アリペイやウィーチャットペイ)が、クレジット決済より先行している。これは中国ではクレジットカードより、スマホが先に普及し、キャッシュレス社会に突入しているからだ。

・新エネルギー自動車(NEV):政府が強く支援している。中国が最大の市場だ。

 ・車載電池などは、2017年にはパナソニックとBYDを(シェアで?)抜いている。

・これからは、「コア技術」を自前で習得できるかどうかが大事だ。

 

と、ざっとこんな感じの内容であるが、驚いたことに、今回取り上げた記事は、何らかの形で中国の大国化に関係する内容だ。もちろん私が選んでいるからだけど。それにしても中国の経済・軍事両面での存在感は不可逆的に増していると感じる。

いつまでも技術レベルが低いなどと見ていてはいけないと思うのである。