Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

ナイス!角川ソフィア文庫 ー折口信夫氏『古代研究』を購入ー

先日、角川ソフィア文庫に入っている折口信夫氏『古代研究』のⅤとⅥを購入にした。

 

折口の名は当然知っていたが、最初に何を買って良いのか分らなかったこともあり、折口の世界にうまく興味が出てきて、自然に接続できるまで読まずにきた。

 

だから、重要性は知っていたのだが、この年齢に至るまで、何一つ読んでいない。新潮文学アルバムに載っていた写真を見たことがあるぐらいだ。

 

ところが今回、呉智英氏の『読書家の新技術』の紹介記事を書いていた時に、白川静氏の『初期万葉論』に「呪的世界の再現」が見られるという箇所を再読した(呉智英『読書家の新技術』、朝日新聞社、1987年、85頁)。

 

そこで白川静氏『初期万葉論』を購入した。全集を買うとなると高いし、通勤中に読むことが困難である。同書は幸い、中公文庫に入っていた。そして、ざっと全体を見たら、「地霊」などという言葉や、折口氏の『万葉集講義』などに言及されていた。そこでバーンと折口氏の著述の世界への通路が開かれた感じがしたのである。

 

早速、ネットで折口氏の万葉集関係の著作や論文を探したが、中公文庫版のものは品切れのようで、私が探した範囲で、新品を手に入れることは難しかった。ハードカバーの全集は高く(6,000円台)、持ち運びに不便である。まとまった読書時間が取れない私としては、できれば文庫版が欲しかった。

 

本屋に行くと、角川ソフィア文庫に入っているではないか!目次を見てすぐに読みたい巻次を購入。

 

・国文学の発生(第一稿)ー呪言と叙事詩とー

「日本文学が、出発点からしてすでに、今あるままの本質と目的とを持っていたと考えるのは、単純な空想である。そればかりか、ごく微かな文学意識が含まれていたと見ることさえ、真実を離れた考えと言わねばならぬ」(Ⅴ、72頁)

 

・万葉人の生活

「飛鳥の都以後、奈良朝以前の、感情生活の記録が、万葉集である」(Ⅵ、121頁)

 

・叙景詩の発生

「国民性を論ずる人が、発生論的な見地に立たないため、人の世はじまってからすぐに今のままの国民性が出来あがっていた、と思われている。江戸の犬儒や、鍛錬主義者の合理化を経た士道・武士道が、そっくり戦国どころか、源平ころの武家にも、その精神の内容として見ることが出来る、というふうに思われ勝ちである」(Ⅵ、228頁)

 

 など、まだざっと見たに過ぎないが、「刺さってくる」文がいくつもある。

 

修士課程時代、友人と大晦日に「年越し万葉集」と称して、岩波文庫版の万葉集を時間と体力が許す限り読んでいったことを思い出す。その時は、ひたすら音読していったに過ぎなかった。

 

いま思えば、折口氏の万葉集関係の著作や白川氏の『初期万葉集』ぐらいは読んでから挑めばよかった。そうすれば、もう少し有益な視点から物事を見て、お互いを高めあえたかも知れない。6年ぐらい前のことだが、もはや戻ることのできない過去のことである。