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書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

勉強ノートー ウィリアム・バックレー・ジュニア『イェール大学における神と人間』の位置づけ

ウィリアム・バックレー・ジュニア『イェール大学における神と人間』の位置づけについて

会田弘継氏の見解 

 会田弘継氏の『追跡・アメリカの思想家たち』においてバックリーは、『ナショナル・レビュー』などの言論活動を通して、戦後アメリカにおける「保守論壇の創設者」と位置付けられている。

 会田氏によれば、バックリーのデビュー作『イェールにおける神と人』は大学批判の書であり、「イェール大学の教育の「無神論」化、社会主義化がテーマ」である*1「イェールの教育では、社会主義に傾く経済学が教えられ、個人主義よりも集団主義が尊ばれ、教授たちの間に無神論がはびこっている」と卒業生たちたに訴えたという*2

 同書を皮切りに、アメリカの大学の「左傾化」を批判する著作は、1980年代のA・ブルーム『アメリカマインドの終焉』にまで連なっていくという。

 

副島隆彦氏の見解

 副島氏によれば、ウィリアム・F・バックレー・ジュニアは、「アメリカ保守主義の守護神」である。バックレーの政治思想は、バーク主義であり、「伝統的な秩序を重視する立場から社会倫理を重視し、かつ、政府の適度なコントロールの下の政治・経済秩序の安定を説く」論者であるという」ことになる。また、日本で言えば、小林秀雄福田恆存であるという*3

 バックレーの『ゴッド・アンド・マン・アット・イェール』は、朝鮮戦争が勃発し、米ソ冷戦がはじまった1951年に書かれ、学内にいる「ソヴィエト病に感染した隠れ社会主義者」らに対して保守的な立場から反撃をしたものであるという。

「イェール大学の神と人」という言葉について、イェール大学のモットーが「神と人々のために」というものであり、バックレーが用いた時には「イェール大学に巣くっている、神のように威張りくさったリベラル派の人々」という意味に受け取られたという*4

  副島によれば、我が国において「左翼「進歩的知識人」」批判は1970年代に台頭してきたが、アメリカでは1951年になされた。それがバックレーのこの書であり、彼我の差は20年であるという*5

 

 

英語版Wikipediaの見解(2017年10月31日参照)

 バックレーの最初の著作は、イェール大学を批判したもので、イェール大学がその本来的な教育の使命から外れていると議論したものであるとしている。

 

増補改訂版 - 追跡・アメリカの思想家たち (中公文庫)

増補改訂版 - 追跡・アメリカの思想家たち (中公文庫)

 

 

 

 

 

アメリカン・マインドの終焉―文化と教育の危機

アメリカン・マインドの終焉―文化と教育の危機

 

 

*1:会田弘継『増補改訂 追跡・アメリカの思想家たち』中央公論新社、2016年、165頁。

*2:同書、160頁。

*3:副島隆彦『現代アメリカ政治思想の大研究』筑摩書房、1995年、46頁。

*4:副島・同書、同頁。

*5:副島同書、47頁。