Book Zazen

書評を中心に自分の好きなことを詰め込んだブログ、光明を失った人生について書き残しておきます。日本でのアニマルウェルフェアの推進に賛成します。

副島隆彦氏の『現代アメリカ政治思想の大研究』について

 副島隆彦氏の『現代アメリカ政治思想の大研究』を手に入れたのは、2006年ごろであったと思う。

  「ネオコン」という言葉はよく聞いていたが、大学や書店においてアメリカの思想といえば、リベラリズムの立場を解説したものや、リベラリズムの立場から書かれたものが多かった*1ロールズノージック、ドゥオーキンは法や政治思想の世界では有名であるし、9.11以後はチョムスキーの著作なども書店では目立った。しかし副島氏のこの本には、私がそれまでに知らない政治家あるいは知識人が数多く記載されていた。パトリック・ブキャナン(小さい頃にニュースで名前だけは聞いていたかも)、ウィリアム・バックレー・ジュニア、ジョージ・ウィル等々を、副島氏のこの本を読むまで私は全く知らなかったのである。

 

 同書を読んで特に私は副島氏によって「日本で言えばさしずめ、小林秀雄であり、福田恆存である」(46頁)と表現されているウィリアム・バックレー・ジュニアの本を読んでみたいと強く思った。というのも、私は福田恆存の文章を愛読していたからであり、そのような人がアメリカにもいるのならば、是非読んでみたかったのである。とはいえ、その当時の私の英語力では、原書を手に入れても歯が立たなかったであろう。

 

 それでは翻訳はどうだろうか。副島氏は次のように書く。「ジョージ・ウィルの政治評論集は、これまでに10冊近く出版されている。ただし、日本では岩波書店中央公論社筑摩書房などの、思想書の出版社がアメリカの現代政治思想を少しもまともに扱おうとしなかったので、ウィリアム・バックレーを含めてこの40年間、彼らの本はただの1冊も翻訳されていない。日本の進歩派出版社は、なぜこれほどまでに、半ば意図的にアメリカの現代思想を無視し続けて、日本国民への紹介を怠ってきたのだろうか」(50頁)。

 

 

 副島氏の同書を手にしてから約10年が経ち、私の英語力は多少なりとも向上しているのだから、他人に頼るのではなく、ウィリアム・バックレー・ジュニアの著作を手に入れて、自分の目で読み、まとめてみたい。

 

  2017年現在においても、これらの著者について知るための知的環境が改善されたとは言えない*2。新聞やニュースだけを情報源にするのではなく、アメリカの思想の原点の一つを直接に知りたいのである。

 

 

 

*1:もっともサンデルの登場で「コミュニタリアン」の著作を知る機会も増えたのではあるが、コミュニタリアンによるリベラリズム批判を知るというきっかけというよりも、「みんなで議論する」「白熱討論する」ことが大事であるという紹介の仕方であったという印象を受けた。

*2:もっとも、Amazonを見るとパトリック・ブキャナンについては宮崎哲弥氏が監訳した本をはじめ3冊ぐらい邦訳されている。ジョージ・ウィルで検索すると野球に関する本がヒットするが・・・・・